温浴施設愛好家がレクチャー!大阪が誇る秘湯「山空海温泉」で楽しむ、湯と水を愛でる温冷浴という入浴術
2024.03.21
銭湯の数が日本2位※でもある大阪は、昔から入浴文化を愛する湯の街。今回の「OSAKAマニア探訪」では、温浴施設愛好家であり、2024年2月6日の風呂の日に設立された「一般社団法人日本温冷浴協会」で理事長も務める桶美(OKB)さんが、「山空海温泉」での温冷浴ノウハウをレクチャーします。
※出典:厚生労働省「令和4年度衛生行政報告」
大阪には特長的な銭湯がたくさんありますが、今回フォーカスする「山空海温泉」は、豊かな自然が広がる大阪府豊能郡能勢町に位置します。大阪市内からは車で1時間くらいかかる秘湯であり、わざわざ通いたくなるほどの名湯なのです。
「山空海温泉」の誕生は1992年。この辺りは古くから湯治場として源泉が湧き出ていたため、鍼灸院を営んでいるオーナーがその噂を聞きつけ、掘り当てて始まったそうです。当初は患者さん専用の湯治やリハビリを行う場所でしたが、阪神淡路大震災でお風呂に入れない人が続出したのを機に、ボランティアで場所を無償提供したとのこと。その後、設備を整え、一般の方も入浴できるようにしたと言います。
現在も湯治目的で来る人が後を絶たないですが、ここの泉質にハマった風呂好きの方々も数知れず。桶美さんもその1人で、通いはじめて8年が経つそう。銭湯をはじめとする温浴施設での入浴は昨年も365日皆勤で、その数500回以上という桶美さんにして「ここはヤバい!」と言わしめる泉質の魅力と、湯と水を愛でる温冷浴の楽しみ方を伝授していきます。
-
桶美(OKB)大阪市出身。桶美の愛称で親しまれている温浴施設愛好家であり、「一般社団法人日本温冷浴協会」の理事長。全国の温冷浴情報を発信するメディア「フルタイム風呂タイム」、風呂をテーマにした音楽レーベル「桶MUSIC FACTORY」も主宰。ライフワークとして、銭湯と温冷浴の魅力を広め続けている。
冷泉が源泉で、しかもかけ流し。ここの水の質は、大阪府下で最高峰
桶美さんが魅力を発信している温冷浴とは、熱い湯と水風呂の入浴を繰り返す交代浴のこと。温浴で副交感神経を、冷浴で交感神経を刺激し、交互に行うことで自律神経のバランスがよくなると考えられています。桶美さんの推奨温度は温浴が43度以上、冷浴が20度以下です。では、今回なぜ「山空海温泉」をフォーカスしたかと言うと、その理由は水の質にあります。近年は湯の質だけでなく、水の質にとことんこだわっている桶美さんが絶賛する水が、ここにはあるのです。
何がすごいかって、「山空海温泉」の源泉は、地下70メートルほどの場所で掘り当てられているんです。地下1000メートル以上がざらにある中で、大阪府でこの浅さはある意味で異常。深く掘れば掘るほど熱い源泉が湧いてきますが、その遥か手前で掘り当ててしまい、勢いよく湧き出した源泉を止めることができなかったそう。だから「山空海温泉」の源泉は冷泉であり、冷泉かけ流しスタイルなのです。
泉質名は、炭酸水素ナトリウム硫黄泉。硫黄の香りがしっかりと感じられる冷泉で、水風呂はそのまま使用し、熱い湯は冷泉を加温しています。桶美さんいわく「ここまで硫黄の香りがしている水は、大阪にはない。一般的に加温すると香りは薄くなるけど、熱い湯も硫黄を感じられるから、冷泉のポテンシャルが相当高い!大阪府下で最高峰だと思う」とのこと。
熱い湯→水風呂を繰り返し、最後はぬるい湯→熱い湯→水風呂でキメるのが、「山空海温泉」での桶美流・温冷浴
ここからは「山空海温泉」での桶美流・温冷浴をレクチャーしてもらいます。浴場の広さは、6人の入浴がMAXのコンパクトサイズ。3つの浴槽があり、それぞれの設定温度は、熱い湯が40〜43度、ぬるい湯が32〜36度、水風呂が約18度になっています。
まずはきちんとかけ湯をしてから熱い湯にイン。じわじわと体の芯に熱さが入ってきたら、のぼせる前に水風呂へ。水風呂入浴の目安は、1〜2分です。そこから熱い湯→水風呂のセットを繰り返し、最後のターンでぬるい湯を挟み、再び熱い湯→水風呂でフィニッシュ。最後はシャワーではなく、水風呂にあるホースから冷泉を浴びるのがポイント。これが「山空海温泉」での桶美流・温冷浴です!
水風呂にも蛇口があるので、冷泉を出してザブ〜ンと豪快に入るのがおすすめ。「最初は冷たく感じても、肌にじんわりと馴染んで体もだんだんと慣れてくるんです」と桶美さん。出る時は、蛇口をちゃんと閉めておくように!
入ってから上がるまでは、1時間ほどがおすすめ。体が芯からポカポカして仕上がり、クラクラッとなるほどの気持ちよさ(取材チームもしっかり体感しました!)。「体を洗うタイミングは?」と聞くと、「山空海温泉」の場合、入浴途中に洗体するのは、桶美さん的にはナンセンスだそうです。入浴前にかけ湯で洗い流しておくか、洗体しておくのがベストだと教えてくれました。
なぜなら、体に入った温泉成分を洗い流すことになるから。特に湯治目的の人は、途中で洗体しないことで効能をちゃんと持ち帰ることができるのです。温冷浴で自律神経のバランスを整え、効能を体に“入れる”。この“入れる”行為を、ハイレベルで楽しめるのが「山空海温泉」のヤバいところだと桶美さんは言います。
ここからは余談&ネクストレベルの話ですが、この“入れる”行為の後に、桶美さんは“抜く”ことも楽しんでいると言います。「“抜く”とは、温冷浴の気持ちよさ、水風呂やサウナの本質を熟知した人がする高等テクで、体を“軽く”すること」だそう。
「何それ?」と思いますよね。詳しく聞くと、効能は楽しみつつも、毛穴や至るところから温泉成分が浸透するため、効きすぎたらふらふらになってしまう。そんな時は帰りに別の銭湯に寄り、サウナで汗を出し、キンキンの水風呂(地下水か軟水を推奨!)と熱い湯で温冷浴をすれば、効能がほどよく“抜け”、体が“軽く”なるとのこと。まさに高等テクです。
話は高次元に飛びましたが、桶美さんをそうさせるくらい、「山空海温泉」の冷泉、効能はヤバいということです。能勢の豊かな自然に囲まれた秘湯であり、湯治場としても親しまれてきた「山空海温泉」は、絶対に入っておくべき名湯。一度つかれば、あの湯と水が恋しくて何度でも通いたくなると思います!
営業時間:4〜9月/平日10:00〜18:00、土10:00〜19:00、日・祝8:00〜19:00 10〜3月/平日10:00〜17:00、土10:00〜18:00、日・祝8:00〜18:00 定休日の祝日営業/10:00〜18:00
定休日:木・金
電話番号:090-7887-0995
料金:大人800円、小人500円(12歳未満)、幼児300円(3歳未満)
風呂上がりは腹が減る!「山空海温泉」のアフターは、絶品のたまごかけご飯を
「山空海温泉」で仕上がった後は、桶美さんおすすめのたまごかけご飯が味わえる「たまごや 丹州路」へ。ふらふらになった体にたまごかけご飯を摂取することで、元気がチャージされるそうです。
たまごかけご飯には、養鶏場から毎朝仕入れている葉酸たまごを使用。餌にこだわって育て、人間の体に必要なビタミンの一種である葉酸をたっぷり含んだたまごは、とにかく濃厚です。お米は地元の農家さんが作ったキヌヒカリを釜で炊き上げ、甘みと深みのある味わい。
営業時間:9:00〜16:00(たまごかけご飯は土日祝の11:00〜14:00のみ。数量限定でご飯がなくなり次第終了)
定休日:水
電話番号:072-734-4441
https://www.tansyuji.com
こっちも入ろう!桶美さん的銭湯のススメ
1 末広温泉
大阪が日本に誇る、温冷浴の聖地
営業時間:14:00〜24:00
定休日:金
電話番号:06-6703-5356
https://suehiro-onsen.net
https://www.instagram.com/suehiro.onsen
2 八尾グランドホテル
通称、温冷ワンダーランド
営業時間:10:00〜翌8:00
定休日:無休
電話番号:072-994-3591
https://yaogrand.com/
https://twitter.com/YaoGrandHotel
3 不動の湯
大阪市内では希少な天然温泉の銭湯
大阪で、よい湯を!よい水を!
今回の「OSAKAマニア探訪」では、大阪が誇る秘湯&名湯の「山空海温泉」で、桶美さんに温冷浴ノウハウをレクチャーしていただきました。どうですか、銭湯に行きたい&温冷浴がしたいと思ったんじゃないですか?
そう思ったが吉日、善は急げです。まずは「山海空温泉」へ!そして、桶美さんおすすめの銭湯や、他の銭湯にも足を運んでもらえれば。大阪には魅力的な銭湯がまだまだあるので、この文化を楽しみ、とにかく湯と水を愛してもらえればと思います!
では最後に、桶美さんからのひと言を。「どんな銭湯に行っても、自分から気持ちよくなろうとする人が本物。気持ちよくなる方法は人それぞれにあるはずだから、まずは銭湯を楽しんでもらえれば。それでは今日も、熱く温冷申し上げます!」
- Text
- 前出明弘
- Edit
- 前出明弘
- Photo
- 山元裕人
- Direction
- 人間編集部
※掲載情報は2024年3月時点のものです。掲載店舗・施設に関する最新の営業時間は各店舗・施設のHPなどでご確認ください。